模擬仲裁日本大会は、国際商取引学会10周年記念の新規事業として立ち上げられ、2007/2008年から同学会主催で開催されている
です。問題は、ウィーンおよび香港で開催される本大会と同一のものを使用します。日本大会では、英語で弁論をおこなう英語の部だけでなく、日本語で弁論をおこなう日本語の部も設置しています。模擬仲裁は、仮想事例を用いて仲裁のロールプレイをおこなう実践型の取り組みです。Vis Mootは、国際商事法と仲裁※1の研究を促進し、国際ビジネス紛争を解決するための実践的なトレーニングを学生に提供することを目的として、1993/1994年からウィーンで開催されている模擬仲裁の大会です。
ウィーン大会には世界各国から350チーム以上、2003/2004年から開催されている香港大会には100チーム以上が参加しています。
参加チームは、国際物品売買契約の当事者間で発生し(模擬)仲裁が申し立てられた架空の紛争に関して、契約と仲裁手続に関する論点に取り組み、当事者の代理人弁護士として準備書面を書き上げ、経験豊富な実務家・研究者を仲裁人(兼審査員)とする口頭審理に臨みます。
この(模擬)仲裁においては、契約に関する争いについては、主に※2に従い、仲裁手続に関する争いについては、 と当該大会において利用される仲裁機関の仲裁規則に従い、議論を展開します。
問題は、50ページ前後またはそれ以上の英語の文書で、申立人の仲裁申立書と証拠書類、被申立人の答弁書と証拠書類、当事者と仲裁機関・仲裁廷とのやりとりからなります。参加チームは、10月に問題が発表された後、事実関係の分析や判例・学説の調査をして、説得的な立論を検討し、申立人・被申立人いずれもの立場で準備書面を作成します。3~4月に実施される口頭審理では、対戦によって申立人・被申立人いずれかの立場で弁論をおこないます。
事例:製菓業者であるEquatoriana国企業Delicatesy Whole Foods Spと、スーパーマーケットを経営するMediterraneo国企業Comestibles Finos Ltdは、Delicatesy社がComestibles社に対してチョコレートケーキを販売する旨の契約を締結した。チョコレートケーキがC社に納品された後、そのチョコレートケーキには、持続可能でない方法で生産されたカカオ豆が原材料として使用されていたことが判明した。Comestibles社は、Delicatesy社が契約違反(不適合物品の引渡し)をしたとして、契約を解除することおよび(Delicatesy社から支払われるべき損害賠償との相殺により)納品されたチョコレートケーキの代金の支払いをしないことを主張した。そこでDelicatesy社は、チョコレートケーキの代金の支払いを求めて仲裁を申し立てた。
実体法(契約法)の論点として、当事者間の契約はどのような内容のものであったのか(当事者のいずれかの定型条項が契約に組み込まれたのか)、Delicatesy社による契約違反があったか、手続法(仲裁法)の論点として、仲裁廷を構成する仲裁人の1人の忌避について問われました。
Vis Mootの問題では、このような環境問題やサプライチェーン問題のほか、オンラインでの証人尋問、ワクチンやドローンの売買、マルウェア感染と情報流出など、最新の論点や企業が現在まさに直面している問題が取り上げられています。
国際商取引学会模擬仲裁委員会